重篤(じゅうとく)とは?危篤の違いや対応方法を解説
医師から「重篤な状態です」と言われると、パニックになってしまうかもしれません。
「重篤」は、死期が近づいていることを表す「危篤」とは異なります。
症状が重く、非常に危険な状態ではあるものの必ずしも回復の見込みがないわけではありません。
しかし、重篤であるときに準備が必要な場合もあります。
回復の望みが小さいときや本人がキリスト教であるときなどです。
急な宣告で気が動転してしまうかもしれませんが、まずは深呼吸をしてここで説明する内容を参考ください。
重篤(じゅうとく)とは
「重篤」とは、生命にかかわる重大な疾患や生命維持が困難な状態です。重篤であるかどうかに明確な基準はなく、医師の判断で決まります。
厚生労働省は救急医療で重篤に当たる疾患や状態を、下記のように定義しています。ただし、生命に大きな危険はないと判断されればこの限りではありません。
- 病院外心停止
- 重症急性冠症候群
- 重症の大動脈疾患
- 重症脳血管障害
- 重症の外傷、熱傷
- 重症敗血症、特殊感染症
- 重症体温異常
- 重症呼吸不全
- 重症急性心不全
- 重症出血性ショック
- 重症意識障害
- 重篤な肝不全、急性腎不全
- その他の重症病態
上記の疾患以外でも、患者の全身状態から重篤であると判断されることもあります。
医師からの説明で、どれくらい切迫した状態なのかを確認しましょう。
医師の言葉が難しくて理解できないときは正直に伝え、わかりやすい説明を求めます。
医師には、患者やその家族に症状や治療方法を説明する「インフォームドコンセント」の努力義務があります。聞きにくいときは、看護師に相談するとよいでしょう。[注1][注2]
[注1]厚生労働省:救急医療体制の現状と課題について[pdf]https://www.mhlw.go.jp/content/10802000/000328610.pdf
[注2]暮らしの中の医療情報ナビ:インフォームド・コンセントhttps://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/inavi/k/yougo_data/detail/d_0004.html
重篤と危篤の違い
重篤と似た言葉に「危篤」があります。
「危篤」とは、重篤よりも症状が重く回復の見込みが極めて低いと判断される場合に使用される言葉です。
患者の家族や親族に対して、「ご臨終の覚悟をしてください」という意味で使われます。
危篤にも明確な定義はありません。生命を維持する身体の機能が低下し、治療をおこなっても機能が回復せずに、本人の体力が尽きると医師が判断したときに告げられます。
亡くなるまでの時間は医師にも判断しにくく、危篤と言われてから数時間、数日命が続くこともあれば、数十分数分で亡くなることもあります。
医師から「危篤です」と伝えられた場合は、まずは落ち着いて、後述する手順で対応しましょう。
重篤と重体の違い
重体とは、症状が重く生命にかかわる状態です。重篤よりも症状が軽く、死の危険が少ないときに使われます。身体に対する症状は重いものの、生命維持ができており回復の見込みがある場合に使用される言葉です。
重体の他に「重症」もよく耳にする言葉です。重症とは、症状の程度を表す言葉で、「傷病の程度が3週間以上の入院治療を必要とするもの」をいいます。
重症は、命の危険がない場合にも使用されることがポイントです。単純に、ケガや病気の症状の重さを表すと覚えておきましょう。
同じように、中等症は「傷病の程度が入院を必要とするが重症には至らないもの」、軽症は「傷病の程度が入院を必要としないもの」です。
身内が重篤となった場合
身内が重篤となった場合は、どう対応すればよいか迷うかもしれません。
重篤の場合は、症状が重く命に危険が迫っている状態です。重篤な状態から危篤となる可能性も高く、心の準備をしておく必要があります。
ここでは、身内が重篤と診断されたときの対応について説明します。
まずは落ち着いて深呼吸を
医師から「重篤な状態です」と告げられて、パニックになってしまうかもしれませんが、まずは深呼吸をして落ち着きましょう。
危篤とは異なり、必ずしも「重篤=死が近い」というわけではありません。
混乱して医師の説明が頭に入らない場合は、落ち着いてから再度説明を求めます。医師は、同じ説明であっても対応してくれるはずです。
わからない点は理解できるまで質問をします。質問をするのは、決して恥ずかしいことではありません。
医師に直接聞くのが難しいなら、まずは看護師に相談します。
家族の対応についても、看護師に聞くとよいでしょう。
家族や友人など近しい人に連絡する
重篤の場合も、症状がより重いなど必要に応じて他の家族や親戚などに連絡をします。
一般的には、3親等以内の親族や本人が親しくしていた友人などです。
3親等以内とは、本人からみてひ孫、甥、姪、伯父・叔父、伯母・叔母、曾祖父母までの親族です。
危篤でない場合は必ずしも全員に連絡をする必要はありませんが、3親等以内の親族には連絡をして状況を伝えるのがよいでしょう。
親族以外では、本人が親しくしていた友人にも連絡をします。
本人が会いたいと思う人たちとの時間を作ることが大切です。
親族や友人へ連絡をするときは、必ず下記の点を内容に含めるようにしましょう。
重篤者の氏名
自分の名前と続柄
入院している病院名と住所、電話番号、病室
症状
気が動転して、必要事項を伝え忘れてしまうこともあるかもしれません。
上記をメモして上から順に読んでいけば、伝え忘れを防げます。
基本的には、電話で連絡をします。
急がない場合はメールでも問題ありませんが、メールの受信に気が付かないことがあるので電話がおすすめです。
夜間の場合は、どれくらい重篤かですぐに連絡をするか、朝まで待つかを決めます。
非常に危険だと診断されたときは、夜間でも気にせず連絡をしましょう。
夜間の来院については、病院スタッフの指示に従ってください。
勤め先への連絡
身内が重篤な状態で、仕事を休む必要があるときは勤め先に事情を説明して、休暇をとります。すぐに命にかかわる場合でなければ、時短申請をして病院へ通うこともひとつの方法です。
休みをもらったり、仕事を引き継いでもらったりしたときは、助けてくれた同僚や上司へお礼の言葉を忘れないようにしましょう。
宗教別の対応
宗教によっては、重篤な状態になると準備が必要になることがあります。
キリスト教カトリックでは、危篤あるいは重篤な場合に所属の教会へ連絡をして神父を呼ぶ必要があります。「病者の塗油(とゆ)」と呼ばれる生前の儀式をおこなうためです。
枕元に祭壇を作り、ろうそくや十字架、パン、赤ワインなどを置いて儀式をおこないます。病者(重篤者)が犯した罪を神に請うことがその目的です。
キリスト教プロテスタントの場合は、所属する協会の牧師に連絡をします。プロテスタントも、聖餐式(せいさんしき)と呼ばれる儀式をおこないます。
聖餐式は重篤者の口に赤ワインとパンを与え、安らかに天に召されるように祈りを捧げる儀式です。
カトリック、プロテスタントともに症状が重篤で回復の見込みが薄い場合にも、儀式がおこなわれることがあります。
仏教や神道の場合は、重篤な状態で僧侶を呼ぶ必要はありません。
しかし、仏教では従来の枕経(まくらぎょう)をおこなうことがありますので、この場合は僧侶に連絡します。
重篤な症状を理解して必要なら準備をしましょう
重篤と危篤・重体・重症の意味の違いは下記のとおりです。
危篤:回復の見込みが薄く、死期が近いこと。
重篤:生命にかかわる重大な疾患、あるいは生命維持が難しい状態であること。回復の見込みが少なからずある場合に使われることが多い。
重体:ケガや病気が命にかかわる可能性があること。回復の見込みは十分にあり、可能性として命の危険が考えられる場合に使われることが多い。
重症:傷病の程度が3週間以上の入院治療を必要とすること。
医師から重篤と言われても、危篤とは異なり回復の見込みがないわけではありません。ですが、「危ない」と言われると誰でも気が動転してしまうものです。
まずは、気持ちを整理して落ち着くように心がけましょう。少し落ち着いたら、今後の流れを考えます。
症状が切迫している場合は、親族や親しい友人に連絡をします。キリスト教を信仰している人は、重篤となったときに協会に連絡するのを忘れないでください。生前の儀式が必要になることがあります。
仕事を休む必要があれば、休暇を申請しましょう。
職場に申し訳ない気持ちがあるかもしれませんが、大事なときです。
あとで後悔しないように、本人との時間を大切にしましょう。
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